小規模な企業では設置されていないことがありますが、テレビで名前が出てくるような企業では必ず「監査役」という機関があります。
監査役とは株式会社における常設の機関であり、株主総会によって監査役が選任されます。
監査役の役割は「取締役の職務執行を監査」することであり、主な業務として「業務監査」と「会計監査」があります。
1.監査役の設置
会社の設立や組織を規定する「会社法」では、監査役に関しては以下のように定めています。
1.監査役の設置は任意であり、選任しなくてよい。
2.取締役会設置会社と会計監査人設置会社は、置かなければならない。
つまり、取締役会を設置している会社、または「資本金の額が5億円以上」、もしくは「負債の合計額が200億円以上」のどちらかに該当する会社は監査役を設置しなければならないということです。
なお、監査役を設けてあったとしても、設置義務のない会社であれば定款を変更して廃止することができます。
ただ、その場合は定款を変更することになるので、株主総会の特別決議が必要です。
2.監査役の役割及び権限
監査役の役割は取締役の職務執行を監査することですが、実際の業務として行われるのは業務監査と会計監査です。
業務監査は適法性監査とも呼ばれており、取締役の職務における執行内容が法令や定款に違反していないかをチェックします。
一方、会計監査はその名の通り、定時株主総会に提出される決算書類などの内容をチェックすることです。
なお仮に、取締役に違法または定款に反する不当な行為があった場合、監査役はそれを阻止したり、是正させたりしなければなりません。
そのため、監査役は職務遂行上、以下のような権限が与えられています。
1.取締役や従業員から事業の状況に関する報告を受けられる。
2.事業の状況に関して独自の調査ができます。
3.取締役(会)に報告できる。
4.株主総会へ監査結果を報告できる。
5.取締役の不当な行為を阻止するための訴訟ができます。
3.監査役における監査の具体的内容
監査役が取締役の業務への監査を具体的に遂行するには、必要な社内情報を把握した上で的確な判断を下し、必要な措置を講じる必要があります。
従って、各年度において、以下のことの実行が求められます。
1.会社全体の業務概要を把握し、想定できるリスクに応じた監査計画を立てます。
2.計画に則って日常監査を遂行し、個々の監査結果を記録として保管します。
3.日常監査において収集した情報を的確に判断し、改善が必要と思われる事項を代表取締役を始めとする業務執行取締役に対して、報告、連絡、相談を行い、且つ指摘、助言、勧告、並びに行為の差止請求などの是正措置を図ります。
4.年度末には、当該年度における取締役の改善努力に対する監査結果をまとめ、さらに事業報告書及び関係書類の調査を行った上で、監査役監査報告書を作成します。
また、監査意見書を添えて株主総会に提出します。
5.株主総会提出議案を調査するとともに、必要に応じて総会議案の調査結果、及び監査報告の内容について株主に説明します。
4.監査役に与えられた具体的な権限と義務
以下などの事項は監査役の権限であり、実施するかどうかは監査役が判断します。
なお、与えられている権限を適切に行使しないと、職務怠慢による善管注意義務違反に問われます。
つまり、監査役の権限であり、また義務でもあるということです。
1.会社の業務や財産状況の調査監査役はいつでも取締役や従業員に対して事業内容の報告を求め、また会社の業務及び財産の状況を調査することができます。
重要会議への出席や重要な決裁書類などの閲覧、会計帳簿や出納伝票の調査などは、監査役が監査に必要とする情報を入手するための手段であり、これらをしないことは監査役としての善管注意義務に相当します。
2.子会社の調査監査役はその職務の遂行に必要な時は、子会社に対して事業の報告を求め、また子会社の財産状況の調査をすることができます。
会社におけるグループ全体の適正なガバナンスを維持するためには、子会社への適時の監査が求められます。
3.取締役への差し止め請求監査役は取締役が会社の目的の範囲外の行為、その他法令定款に違反する行為、会社に著しい損害を与える可能性のある行為があった場合、またはこれらの行為をする恐れがある時は、当該取締役に対して当該行為を止めるように請求できます。
4.取締役の不正行為における締役会の招集監査役は取締役の不正行為を確認した時、もしくは当該行為をする恐れがあると認識した時、または法令や定款に違反する事実、及び著しく不当な事実があると判断した時は、遅滞なくそのことを取締役に指摘しなければなりません。
また、必要があると判断した時は、取締役に対して取締役会を招集するように請求できます。
仮に、請求日から2週間以内の日を取締役会の開催日とする通知が出されない場合は、監査役は自ら取締役会を招集することができます。
監査役はレフェリー監査役は会社の中でレフェリーの役目をしています。
従って、会社全体の利益を考える立場であり、判断基準は法令や定款でしかなく、特定の取締役の意思に偏ったり、自分の個人的な主観を差し込むことは認められません。
そのため、自分の心を律する強い意志が必要です。